2019.04.09
セミナー出展酒。いつか必ず世界のトップに認められるヤバい日本酒「Yabai-Sake」4銘柄。
先日の日本酒セミナーに参加いただいた皆様に心よりお礼申し上げるとともに、お出しした日本酒について詳しく知りたいというリクエストを頂いたので、こちらのブログ記事を持って紹介したいと思う。
提供させていただいた順番とアテは、セミナーに来ていただいた方のみぞ知るということで、紹介は順不同、写真の都合で左から。
NO.1 山形正宗「まろら」2018
「マロラクティック発酵」というワインの醸造過程で用いられる、リンゴ酸を乳酸と炭酸ガスに変える発酵方法を日本酒の醸造過程に用いて仕上がった日本酒。鋭い酸が、まろやかで複雑みのある風合いに変わるという。「生ハムとの相性が抜群」という触れ込みの通り、事前のテイスティングで生ハムやボローニャソーセージとの相性が素晴らしかったため、今回はこちらの酒を「上燗」から「ぬる燗」にして皆様に提供。プロの方からも「やはり燗にして味が開き、食材に抜群に合う」という感想も。常温と飲み比べをして、普段燗酒を飲まないという方々にもかなりの好感触。実はこの酒、この度セミナーの趣旨を知った酒屋さんに勧められるまで、私も完全にノーマーク。つまりこのセミナー開催をきっかけに出会えたお酒だった。他の肉系食材にも素晴らしい相性の可能性を秘めた、山形を代表する名蔵・水戸部酒造から。
No.2木戸泉 afsスパークリング 2018
千葉はいすみ市にある木戸泉酒造に、かれこれ4年程前から大体毎年お邪魔している。気づけば私はそのポテンシャルの高さと「異質さ」の虜になっていた。正直、この酒を誰にも教えたくなかった。「afs」を教えてくれた、一見さんお断り西麻布の日本酒barで秘かに愉しんでいた酒も、去年くらいから「[afs]を知って居るか!?」とマニアックな方々にいよいよ言われるようになり、年貢の納め時。私のセミナー酒として今出展。とにかく酸っぱい!とにかく美味い!「高温山廃一段仕込み」という、もはや意味のわからない製法を実に60年前から仕掛けているという時点で、「タイムマシーンで未来から来た子孫が仕込んだのではないか?」という疑問させ抱かざるを得ない。異次元で、しかしながら造りはクラシック。未来への発信力がとにかく「ヤバい」酒蔵である。
No.3 陸奥八仙 サワーエール 2018
衝撃だった。この発想を持てるのは間違いなく、酒蔵の血を継ぎながら元アサヒビール出身である、杜氏であり常務のN君のセンスによるもの。だって、ホップを、日本酒に漬けて瓶内二次発酵なんて、、普通の蔵人が考えつくものでは無い。鼻の奥に抜ける、ホップの香りというより、薔薇の花のような、或いは何かのオーガニック・ハーブのようにも感じるエレガントな芳香。どんなパーティーでも驚きとともに迎えられるであろう乾杯酒として・・・私なら、綺麗な味のスパークリング日本酒でもシャンパンでもなく、これを選ぶ。是非飲んでいただきたいと思いつつ、今年以降の製造は未定?更には、既に蔵元に6本しか無いうちの3本を、今回は無理を言って譲ってもらった。内2本はセミナーで皆様と。1本は・・・申し訳ないがまだ私の隠れ家の冷蔵庫でいつか開栓の時を待っていることは内緒だ。
No.4 越後鶴亀 ワイン酵母仕込み
この酒は、たまたま「酒にまつわる偉そうな肩書き」を持った友達が、うちの事務所に持って来た酒のうちの1本だった。新潟の酒は確かに美味しいけれど、何だか「面白み」にやや欠ける。近年、そんな私の「変態酒趣向」のセンサーから新潟の地酒は一部を除いてはほぼ外れていた。そんな中、シラフで一口これを飲んだ時の衝撃は忘れられ無い。日本酒は、ワイン酵母を使っていても、必ずしも酸っぱかったり酸度が高くなるとは限らない。しかし、この酒の絶妙な酸っぱさと新潟の酒らしい品の良い引き締まった感じは、多分フレンチ、イタリアン、スパニッシュ?なんらかの西洋料理と、とんでもない好相性を魅せてくれるという直感があった。私が今回のセミナーのために作った「酒にとろける春色のムース」は、まさにこの酒との相性を確かめなら完成したのだった。しかもである。こんな面白い酒が、ヨドバシ・ドットコムのサイトで注文すると翌朝届くのだから(もちろん在庫数は限定)。いい時代になったものだ。(株)越後鶴亀謹製。
多分、昨年パリ、シャンパーニュ、ボルドーを巡っていなければ、「日本酒セミナー」の酒のチョイスはこうはならなかったと思う。きっと「代表的な人気銘柄の酒」、「個人的に好きな酒」。あとは「変化球の酒」、「美味い普通酒」あたりを1本ずつ選んでいたにちがいない。
私はこの4種を、例えばパリやニューヨークや香港の有名レストランのシェフが集まる会に持って行けば、間違いなく大絶賛されるという確信がある。できるなら今すぐそういう場に持って行き、プロ中のプロにテイスティングしてもらいたい。世界の食のトップが求めている味というのは、必ずしも「品評会でトップを取った大吟醸酒」でも、「凄まじく造りの良い純米酒」という訳でも無いと最近私は思うのだ。特徴的な酸があったり、振り切った「ヤバい酒」、「変態酒」の中にこそ、海外のグルメ達が「コレだ!」と声を上げるエッセンスが詰まっている。
次回、こういう会を開催するかは今の所全く未定だけれど、やはりなんらかの方法で、より多くの人に、より色の趣向の違う世界中の人々に、こういう日本酒の存在を知ってもらいたいという気持ちは強い。
海外の「食の最高のステージ」で、四合瓶ないしは一升瓶を「ドン!」と自信満々テーブルに置く日を、私は密かに夢見ている。