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2019.08.09

盆休ミ。18キップ ノ ススメ。

 

 

盆は・・・・

 

 どこにも行かず冷たい部屋で映画でも観ながら過ごすのも一つの手だろう。スマホでくだらない動画やゴシップ記事を観ながら、”ああ今日も貴重な休日を無駄に過ごしてしまった”という後悔に苛まれることさえ無ければ、近づく台風のリスクを避けぼおっと家で過ごすのは、悪い選択肢ではない。

 

「お盆インフレ」の高額チケットを手に、成田の手荷物検査とイミグレーションを1時間半かけて高飛びする南国バケーションも、財布が痛くも痒くもない人には良い。小生意気な子供が、帰国エリアを出た辺りで「ハワイ。たのしかったけど、つかれた。」なんて放送局が求める憎たらしい…否、「微笑ましい」コメントで全国デヴューを果たすかもしれない。きっと、夏休み明けのヒーローだ。

 

朝夕の田園都市線みたいな狂気の新幹線でグッタリした妻と子供を見ながら「ほら、パパは毎日もっと混んだ電車に乗って仕事に行ってるんだぞ。大変だろ?」などと言って疲れている家族の顰蹙を買う父親もいるかもしれない。

 

或いは牛歩の如く前に進まぬ渋滞でエコカーのバッテリーを酷使しながら、中央道のサービスエリアでおじいちゃんおばあちゃんのくれた漬物や乾物が「くさい」と口走った奥さんと、渋滞のイライラで互いに火花を散らすとか。

 

 

それぞれの盆に、それぞれのストーリー。もしかしたらそんなストーリーを短編で綴った映画でも見ながらシニカルに嘲笑う盆が正解なのか・・・

 

皆さんは、どうやって過ごすのでしょうか。

 

 

 「時間」と「独り身」を持て余す方に特に、私が絶賛お勧めしたいのは「青春18きっぷ」の旅だ。勿論、一人でなくてもそんな旅に付き合ってくれる酔狂な友人や家族が居るならば、鈍行列車の旅も全く悪くない。1人だと5日分。5人だと一日分。1人(1日)あたり2千数百円で体力さえあれば地の果てまで旅が出来、「青春」という名を冠しながらも青春なんて言葉をとうの昔にどこかに置き忘れた世代でも「せ、青春ナントカって切符を・・・」と窓口で言うのが恥ずかしくなくば誰しも買う権利があるという点では(確か一部券売機でも買えると思う)、自転車や徒歩を除いて「最も平等で市民感覚の旅行手段」と言っても良いだろう。

 

 飽きっぽい私がかれこれ20年以上、大体毎年この切符で「プチ・クレイジー・トリップ」を(最近は出張を絡めているけケースも多いけど)してきたのは、その旅ならではの魅力があるからこそだ。「ローカル線に乗ってチンタラ旅する神経がわからない」なんていう8割強くらいの至極真っ当な市民の皆様にこそ、私は是非この盆という時期にこの旅路を推したい。

 

なぜこの時期の18切符旅が良いのかというと、1番のメリットは「お盆の帰省ラッシュ」に無縁であるということだ。

 

「都内だろうが観光地だろうが、どこに行ってもバカみたいに混んでて・・・」というのがもはや日本の盛夏のロングバケーション”OBON”の忌々しさを表す代名詞である。南おフランスもイビザも、カンクーンもカンクー(関空)も、混む時期には混む。

しかし、この18切符凡そ普通列車・ローカル列車にしか乗れないわけではあるが、途中、お祭りや花火大会にでも出くわさない限り、大方座席に座って旅が出来る。しかも「ロングシート」と呼ばれる横一列の座席ではない「クロスシート」の長距離車両がそれなりに多いので長旅の景色も良く、体も楽だ。もし「クロスシート」でなくとも、正面にのんびりと流れ行く日本の田園風景を座って正面に楽しむことができるのは、旅の醍醐味となる。

 

 また、「旅の宿」に関しても、お盆はメリットがある。18切符旅をしていると、行程で大体路線図を見ながら泊まりたくなる(或いは必然的に泊まらざるを得ない)のが、「地方都市」だ。「宿が取れない」、或いは「チェーン系のパッとしないホテルにリッツカールトンやフォーシーズンズ並のレートを支払う」という、後味の悪さを経験することもほぼ皆無である。なぜなら「盆の地方都市にわざわざ来る人が居ない」からだ。この時期は出張サラリーマンも居なければ甲子園界隈でない限り高校生にホテルを丸々占拠されているということも無いので特にシングルルームが安い。温泉地や有名な観光地に直接泊まることは避けなければならないが、そこまで難なくアクセスできる地方都市ほど、意外と穴場の観光資源があり美味いものを頂くことができるのだ。(ちなみに私が昨日行って来た日本を代表する観光地京都は、近年の宿泊施設供給過多によってシングルルームは盆期間も思いの外安いのでお勧めだ。)

 そして、県庁所在地は、地方特色ある美味い飲食店には絶対に困ることがない。これが非常に大きな魅力で、選択肢の少ない温泉旅館の食事より、はるかに美味しいものが食べられることを断言しておこう。私のお勧めは、甲府駅、岐阜駅、仙台駅、高松駅、富山駅、山形駅、秋田駅などなど、県庁所在地を外せば、姫路駅、浜松駅、旭川駅、北見駅、本八戸駅、堺駅、倉敷駅・・・あゝキリがない。そんなわけで、素晴らしき日本の地方都市の素晴らしさを否応無しに知っていただけるというのも、このローカル旅の醍醐味なのである。

 

 初めて経験する18切符の旅路は、多少タフに感じるかもしれない。「長く電車に乗る=苦痛」という「体」というより「心」の疲れを、1回目で克服できる人は多くはないと思うからだ。リラックスするための旅なのにどうして?と思う方もいるだろう。「次はどこで降りれば良いんだ?」という不安感や、「先を急がなければ」という思い。「次の列車が来るまでこんなに時間があるのか!」など。これは、都市生活に馴染んだ人間の感覚を最初なかなか解放できないからと私は考えている。

それに加え、見慣れない景色や聞きなれないホームの発車音などなど、のんびりして居るはずなのに「感動を含めた刺激と情報量の多さ」。

 私はアジアの知らない街を旅して歩き始めた頃、最初「何故こんなに刺激的で楽しいのに体が疲れて居るのだろう?」と当初不思議に思ったものだった。

慣れない初めての現場や職場で、何か大した仕事もしないのに疲れるのとはちょっと違うけれど「理屈的」には似たような物である。結果、無意識に「肉体的な疲れ」として影響するのだと思う。

ただ2度3度、この旅を経験して楽しんでしまえばこっちのものである。

 

5大陸の秘境や都市を旅するバックパッカーのような境地を、あなたはこの奇妙な切符を使い、この狭い日本で得ることができるかもしれない。 

 

盆休ミニ、 非凡ナ ヤスミノ ススメ。

 

さあ、ノープランで近所のコンビニにしか出る予定のないあなた。人混みや行列が大嫌いなあなた。「右にならえ」が嫌いなあなた。ニースやバリやパラオに行く経済的余裕のないそこのあなた。重い腰を上げ、1、2日分の軽い着替えと、文庫本を、その辺のトートバッグに突っ込み、今日か明日、みどりの窓口へ。

 

最長5連泊なら、その分の着替えが必要だって?

この旅は、「何日で飽きて帰ってくるか分からない」くらいの気まぐれな気持ちで出かけるのが一番良い。そして荷物は軽ければ軽い程よい。地方都市の、ユニクロでもZARAでも、ちょうどこの時期セールで服でも買えば、それも含めてまた良い思い出になるでしょう。

 

 

・・・ちなみに私はたった先ほど、18切符の旅路から帰還したばかりなのだけれど、

一昨日の夕方に仕事を終え、→

沼津で酒とアテを購入し18切符で乗れる指定席快速、→

思い出の名古屋に泊まり、→

翌日は京都の五条坂陶器市で大好きな作家さんたちの器を大量に購入。→

夜は来た道を戻りながら適当なところで岐阜にステイ。→

信じられないほど美味しい料理と酒を堪能し、駅前の酒蔵を訪れ→

ランチには浜松で人気の老舗で絶品天丼をいただき、→

熱海で美味しい晩のつまみを買って帰る、という流れでした。

 

 

正味たった2日プラスαの何でもない気まぐれな旅程が、私の心をどれだけ豊かにしてくれたことでしょう。。

 

旅の写真のダイジェストも添えて。

 

沼津から浜松を抜け名古屋まで。東海道線グリーン車よりゆったりとした320円の指定席が夕方出発の旅路に関わらず遠熊手場所まで1本で連れて行ってくれた。
静岡で人が降り、遠慮なく晩酌。広島のにごり発泡「誠鏡」と、静岡名産黒はんぺん。イタリアンサラミ。夜の車窓を眺めつつ、良い晩酌だ。
忙しい日々、なかなか読めない文庫本。藤沢から浜松の間ですでに1冊読み終えてしまった。
名古屋着。思い出の店で名古屋メシと焼き鳥。旅はノスタルジーを、優しい酒のように醸してくれる。
京町家で謎のカラフル・ペットボトル。世界は不思議な色と景色であふれている。
鴨川に連なる鯉。流れを避けて、一休み。
このために京都に来た。五条坂の陶器市。本当に素晴らしい作家さんと素晴らしい作品ばかり。K付ばカバンが一気に重くなる。
帰りは岐阜にステイ。夏に美味そうな酒。東京で手に入らない酒もGETできるのが18切符旅の特権。
岐阜駅の周りは本当に飲食店のレベルが高い。久しぶりに入りたい店もあるが、やはりここは、新規開拓か。
メニューを見て、「野生の勘」で「この店だな」と決めた。
写真でどこまで伝わるかわからないが、それも旅という物の本質だろう。いって、みて、味わって見なければわからない。日本中を旅した中で、一番最高の練り物を食わせる店を発見!
帰り路のランチは浜松の老舗天丼。店の雰囲気、揚げる技も含めて店の価値が決まる。
京都五条坂の戦利品を見て悦に入る。今夜もうまい酒が呑めそうだ。

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