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2018.08.28

オトナの近場18切符旅。前編/「酒と18時の蕎麦屋」。「揺れる吊革と産業革命」。

2018.8.23

 

旅で余った18切符を使い、午後茅ヶ崎駅から北上することにした。家に帰るとあまり仕事に集中することができない性分。静かな車内と心地よい揺れのグリーン車こそ、仕事が捗る「移動事務室」だ。ちょうど前日、群馬の芋の茶菓子を頂いた。明日は決まった用事がないから、列車に揺られ大体3時間。高崎を目指した。

 

いつもの「日本全国知らない街で美味い店を見つける」シリーズだ。私の20代からのライフワーク。

 

「何故、高崎?」・・答えは、シンプルに2つ。

 

「そこが終点だから。」「今まで高崎で呑んだことがなかったから」。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホテルまで歩く道すがら、駅から程近い場所で突然「ピンと来る店」に遭遇する。チェックインをして荷物を降ろしてからどこかに呑みに出歩く予定だったが、19時を回ると、もしかしたらこの店に混んでいて入れないという懸念もチラつく。この時間に飲食店の暖簾をくぐるというのは、私の旅においてかなり異例であったが、案の定、店内の8割方は客で埋まっており、席についてしばらくすると満席になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そもそも町歩きをろくにせずに店に入ることなど、今までの旅であっただろうかと、1杯目の地酒を呑みながら思い返してみた。どんなに短くても30分。通常なら1時間くらいは、街の空気を感じながらぶらり歩きして入る店を決める。世界中の街で美味いものを食べ呑むことと同等に、世界の街を歩き回って店を探すこと自体が、私の旅の最大の楽しみなのだ。しかし、この日の「異例の行動」は正解だった。なぜならこの店が、私の中で『ベスト・オブ・呑める蕎麦屋』1位となったからだ。

 

ツマミ、酒、蕎麦…全て良い。蕎麦屋に来たからには品書きの中から「天ぷら盛り合わせ」や、「そば焼き味噌」なんてものを注文したい所ではあるが、まさかの「たたみいわし炙り」、「モツ焼き」、「鴨肉ソーセージ」。これは…蕎麦屋において「アブノーマル・プレイ」的アテである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『こういう店が近所にあったら』と思いながらも、近所に無いから旅に出て余計ありがたさを感じるというものだ。モツ焼のタレがまた美味い。焼き鳥のタレに少し近い感じでピリ辛。「よく練れてる」味だ。1人客用にメニューの「半分サイズ」で提供してくれたところも憎い。

 

さらには価格が相当良心的だから驚いてしまう。もし蕎麦を頼まずに、一杯飲んで帰るという立ち飲み的な使い方をしたところで、十二分満足のゆく内容である。酒のチョイスも良い。地元の酒、最近人気の銘柄、なかなか渋いレンジの地酒など19種。「軽く蕎麦を啜って、それから夜の街に繰り出して1、2軒はしごと行こうか。」と入店する前は思っていたのだが、ついつい美味いアテと群馬の地酒3種3合も呑んでしまった後となると「いや、今日は…ここだけでいいか。」と、20時を前にして「ハシゴ」を断念。

 

いやはや。こんなに早くホテルの部屋に篭ることなど、今まであっただろうか?前例の無いというのも、たまにはいいじゃないか。ホテルまでの道のりを、少し遠回りに何度か歓楽街の角を曲がりながら歩く・・・。い「や、もう一軒だけ、寄ってみようか?」心が揺れるのは、「乙女」ばかりでは無い。酒場を歩く男の心も同じようにしばしば揺れる。

 

結局、ホテル至近の焼鳥屋で無理を言って串5本、テイクアウトをお願いし、ホテルの部屋でいつもの「黄色い缶」を一本。腹は一杯だったが、やはり1つの街で1店舗の味しか知らずに去るというのは、あまりに自分らしくないし寂しい。まあ、結局、その焼鳥屋で鶏が焼けるのを待つ間、手持ち無沙汰で地酒をキュッと一杯呑んだから、事実上2軒ハシゴしたことにもなるか・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エアコンのよく効いたビジネスホテルの部屋でPCに向かい、半裸で美味い鳥をアテにチビチビ呑むという「完全なる無防備」は、私にとってバリのリゾートでサイドテーブルにラムベースのカクテルを置いて文庫本を読むリラックスと同等のかもしれない、と、鶏皮を串から歯で引き抜きながらクリアアサヒを飲み干した時に、ふと思った。

 

 

2018.8.23

 

翌朝、上信電鉄というローカル列車に身体を揺られ、世界遺産・富岡製糸場へと向かう。とにかくこの列車がなかなか印象深かった。途中駅のノスタルジックな風情はもちろんだが、一番は、「飛ばし始めるととんでもなく揺れる」ということだった。正直、長い直線はミャンマーの街中を走るドアもエアコンもない列車「ヤンゴン環状線」よりも揺れたのではないかと思う。30分ほど、その荷馬車のような揺れを楽しみ、上州富岡駅に到着した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつの頃か忘れてしまったが、実は新潟か長野の帰りに、車で、深夜の富岡製糸場前を通った記憶がある。下手すると20年以上前のことだから、何の帰りに、誰とその車に乗っていたのかさえ思い出せないのだが、製糸場の門扉とレンガの建物の前に立った時に記憶が蘇った。

 

夏休みということもあり、思いの外、家族連れや、若者のグループなどの団体がこの田舎町を歩いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「富岡製糸場」という「観光施設」についてあまり多くを語るのは野暮だと思うところと、書き始めるときっとかなり文章が長くなってしまいそうなので、今回は割愛する。ただ、平成が終わろうとするこの時代、訪れたことのない人は、是非一度行ってみて頂きたいと思う場所だった。

 

『チョンマゲ』『ハラキリ』の時代の終焉から僅か5年後。やがて世界のシルク産業を質と量で席巻するそのフラッグシップ工場であるこの「富岡製糸場」は産声を上げた。昭和以前の「国力」とかいう話になると、どうも「戦争」に向かったイデオロギーや、ネガティブなイメージを連想する人もいるかもしれないが、あくまで日本の「物作り」と『地力』自体が、本当に凄まじかったという事実は、我々は、この国の素晴らしさとして誇りに思うべきことなのだと、私は素直に感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今の日本はどうなのだろう?歴史の只中にいると、もしかしたら自分の生きている時代こそ客観的に見ることが難しいのかもしれない。

 

製糸場だから『絹糸』に掛ける、というつもりはないが、この社会情勢の中、強くも『しなやか』な国であってほしいと、この日歴史に触れて思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、続いてもう一つ、ローカル線で、美しい日本伝統文化に会いに…

 

 

後編に続く。

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