2017.03.21
春から始める日本酒ラベルの読み方入門。
以前、名古屋にある日本酒メインの和食店がオープンする際、スタッフの方々に日本酒のレクチャーをさせてもらう機会があった。ここ2年くらい店に顔を出せていないが、噂によると今も非常に繁盛しているらしく、某グルメサイトのすこぶるコメントを見ながら時々ニヤニヤしてしまう。店の定番銘柄以外に旬の面白い銘柄をこまめに入れ替えているようで皆、もしかしたら自分より日本酒に詳しくなっているかもしれない。
昨日、古いパソコンを引っ張りだして必要なファイルを探していたのだけれど、その時のレクチャーの為にコピーして配布した資料の内の1枚がたまたま出てきたのだ。雑と言えば雑なつくりだけれど、久々に見てみると、一晩で書いた割にはなかなか分かり易い内容にはなっている。(翌年別の機会で使う際に若干のマイナーチェンジを加得た部分はあるが。)何年もの間ハードディスクの奥底で息を潜めていた懐かしい文章を読みつつ、せっかく出てきたのだから、この際「甲羅干し」にブログでやろうと思った。
「日本酒は嫌いじゃないけど・・・和食屋で品書きを見ても、酒屋の冷蔵庫に並んだ日本酒のラベルを見てもチンプンカンプン・・・」という人は、是非、花見など春の宴に持参する酒の参考にされてください。
(クリアアサヒもよろしくね。)
純米大吟醸・純米吟醸・純米酒・大吟醸・吟醸・本醸造・普通酒って何だ?
★これは言葉で説明するより、ただ目で見てもらった方が分かりやすい。理屈は割愛します。
続いて、
「新酒」って何だ?
★主に酒造りのシーズン、冬場を中心に搾られ出荷される出来立てのお酒。フレッシュでピリピリした味わい。
フルーティで「若い」「青い」味と例えられることも。11月~2月頃がピーク。楽しみな季節ものです。
「ひやおろし」って何だ?
★冬に搾った酒を、涼しい酒蔵のタンクで熟成させ、満を持して秋に出荷する酒。
「新酒」に比べ、荒々しさが落ち着き、滑らかになる。
・・・・・余談ですが、酒蔵や酒屋さんに楠玉のような丸くて茶色い奇妙な丸い物体が
ぶら下がっているのを見たことがあると思います。
あの玉は、新酒の季節に「新酒が出来たよ~」というサインなんです。
「杉玉」とか「酒林(さかばやし)」と呼ばれ、杉の葉っぱで作られており、新酒の冬は若々しい緑色。
秋になり、茶色く色づいた時が「ひやおろしの季節だよ」というサインなんですね。
「日本酒度」って何だ?
★「比重計」という器具を酒の中に突っ込み、酒の「質量」というか「重さ」?を計る、日本酒のスペックを見る一つの尺度。
一般的に日本酒度が「+」に高い方が「辛口」タイプが多いと一応覚えておくと良いと思います。
理屈としては、
糖度が高い=酒が重い→比重計が浮く=目盛りがマイナス方向に振れる→「甘口」。
ただし、アミノ酸やアルコール度数、原酒かどうかなどにより比重のがかなり影響するので、
あくまで「目安」として考えて下さい。
「火入れ」って何だ?
★日本酒は元々は、ナマモノです。劣化し、腐ります。その為「タンクから搾った段階」と「便詰め出荷」の段階で2回
65℃位の温度で「火入れ」と呼ばれる加熱をして劣化を防ぎます。一般的にラベルに生酒・生貯蔵・生詰めなどの
記載の無いものは、全て火入れをしている酒だと思って間違い有りません。
「生酒」って何だ?
★前述の二度の「火入れ」加熱(火入れって何?を参照。)を一切しないで出荷されるのが「生酒」です。
生酒は、鮮度を保つ為にも冷温保存が必要です。
特に、封を一度開けたら、瓶を常温に晒すのはアウトです。味は劣化し、雑菌が繁殖します。
生酒は、フレッシュで若々しくフルーティな味がします。「無ろ過」と同じ、最近人気が出ている呑み方です。
同じ酒でも、火入れをするとしないでは、「刺身と塩焼き」位の差・・・は無いにしても、結構違います。
また、多くの生酒は独特な「甘み」を感じるので、料理に合わせるのが難しい場合もあり、
「酒っぽい酒」が好きな人には、苦手と感じることもあります。ただ、「日本酒が嫌いだった人」や「女性」、
外国人などが、「日本酒の価値観が変わった!」と、ファンになるきっかけとなることも非常にに多いです。
「生貯蔵」「生詰め」って何だ?
★酒を搾った後タンクで寝かせる前に火入れを行うのが「生貯蔵」。
生で貯蔵していた酒を、瓶詰め出荷前に火入れを行うのが「生詰め」。
ごっちゃになると思います。自分も酒が進むとどっちがどっちか忘れます。
「古酒」って何だ?
★ワインやウイスキーのように、年月をかけて熟成させた日本酒です。日本酒を長期熟成させるという概念は、
実の所、結構近年に注目され始めた試みで、今では様々な蔵が研究を重ねており、ジャンルとしてこれからも注目されます。
生酒や糖度の高い酒とは違う甘みもあり、重く、まろやか、複雑な味わい。古いものは「紹興酒」のような味に近づきます。
比較的濃い味の料理にも合います。
「無ろ過」って何だ?
★乱暴に言えば、言葉の通り「ろ過しないお酒」です。更に乱暴に言えば、「にごり酒と普通のお酒の間」です。
「うすにごり」というラベルが貼ってあるお酒も、大体無ろ過かそれに近いものと考えて良いでしょう。
「端麗辛口」といった、水のようにさらっとしたキレイな味のお酒は、平成初頭の日本酒ブームの頃から「良い酒」の主流でした。
無ろ過はそれと逆・・・というとちょっと語弊がありますが、とにかく呑んだ印象は「別ベクトルの酒」と言えます。
無ろ過はお酒の「雑味」も有りますが、本来の旨味、米の特徴なども残る為
個性があり、特徴が出て面白いです。ここ5~10年位で酒屋さんにも結構並ぶようになった新ジャンルと言っても良いでしょう。
「原酒」って何だ?
★普通の日本酒は、水を入れてアルコール度数や濃度、味を調整します。原酒はまんまのお酒で
味が濃くアルコール度数が高いのが特徴です。
通常の日本酒は15度前後ですが、原酒は20度くらいのものもあります。度数低めの焼酎と大体同じです。
「生もと」「山廃」って何だ?
★日本酒の製造工程で雑菌の繁殖を抑える為に、多くの酒は「乳酸」を入れます。
「生もと」「山廃」は乳酸を人工的に添加せず、酒蔵内の何処かに、或いは何かに自然と住み着いている乳酸菌が
仕込みタンクに入り込むことによる、「自然の摂理」を活用した古来の酒造り。
生もと造りは、一晩中もろみをかき回す「山おろし」という気の遠くなるような重労働が必要な造り。
山廃は、その「山おろし廃止」のという意味の略称。かつては不安定だった酒造りが、
醸造技術が進化したお陰で、「山おろし」を省いても十分なクオリティが出せる」ということで定着しました。
いずれにしても乳酸を使わないで作る、という通常の酒造りよりも神経を使い、手間のかかる手法です。
特徴・・・・・まったりとした吟味。熟成しても味が崩れない。コク・旨味が濃醇。常温~熱燗が合う。
「荒ばしり・中取り(中汲み)・責め」って何だ?
★「もろみ」(酒かすとお酒が混ざった状態)から酒を分離抽出させる為に、
袋などで搾る作業の中で、圧力をかけずに最初に出てくる酒が「荒ばしり」
人の手などで少しの圧力をかけて出したものを「中取り(中汲み)」、
最後の一搾りを「責め」と呼んでいます。
・荒ばしりの特徴・・・オリ(白く濁ったもの)が絡んで炭酸ガスを含みピリっとしたフレッシュな印象。
・中取り(中汲み)の特徴・・・3つの中では最も良質とされる。
・責めの特徴・・・雑味があるとされる。
・・・・・・なお、特に記載の無い通常の酒は、3つを分けず混ざり合っているものも多い。
「直汲み」って何だ?
★タンクから(搾らず)直にくみ上げるた酒。空気に触れることが少ない為、
フレッシュで炭酸ガスが生きていることが多く、ピチピチとした味わい。
「袋吊り・雫酒・斗瓶囲い」って何だ?
★ここまで来ると結構マニアックなので、知的好奇心に火が付いた方は、是非ネットや本で調べてみて下さい。
良い宴を。