MALAYSIA ~ マレー鉄道と、遠い汽笛。
マレー鉄道公社ビル。ムーア式建築。1917.
存在感のある独特な建築は、かつてのこの国が誇った鉄道の栄華を誇らしく物語る。
向かいには「クアラルンプール駅」。1910
イスラムの建築やタージマハルのエッセンスを取り入れて設計された。
タイ、マレーシア、シンガポールと、国境を越え続く長距離列車の需要は、
時代の流れの中でバスや飛行機という交通手段に奪われる。
一日何本かの長距離・短い近郊列車をやり過ごす時間以外、
静まり返ったプラットホームに人影を見つけることさえ困難な程だ。
21世紀になると同時に、時代の置き土産となったこの駅舎は、
バックパッカーのバイブル・沢木耕太郎「深夜特急」にも登場する。
はるばる国境を越え辿り着いた旅人は、また次の国境を越えるべく、ここから南へ北へと立つ。
静かすぎる駅舎で耳を澄せば、遠い遠い昔の汽笛が聴こえてきそうな気がする。