2016.03.20
「ヘンタイ車」憂鬱と悦楽。❶1976Y メルセデスベンツ450SLC
「ヘンタイ車」という言葉を良く思い出す。どんな車のことを指すかというと、多くの人がまず車名を知らず、クラシックカーと言えるほどのプレミア性も無く、中古車市場に出回っても相場というものがそもそもぼんやりしているような「ヘンな車」のことだ。
十数年ほど前、自分の中に空前絶後の「変な自動車」ブームが巻き起こった。
正面から見るとまるで鏡餅にしか見えないイタリア・フィアットのムルティプラとか、
バカでかいくせに2ドアという、「走るアメリカン不条理」キャデラック・エルドラドやリンカーンマークⅧ。
個性的というのではなく「ただ珍しく不人気」というだけでフォルクスワーゲン・シャランのFORDの兄弟車(シャランも相当マイナーだったけど)ギャラクシーなど、
私や私の知人たちが、ちょっと「不条理」とか「奇妙」といったニュアンスを醸す不人気車を「ヘンタイ車」と呼んでいたのだ。
どういうわけか、そういう車に妙に惹かれていたのだ。
ちなみに過去の私の愛車遍歴の中で乗っていたヘンな車はというと、
1976メルセデスベンツ・450SLC
昔の東武線みたいなクリーム色をした古い2ドアメルセデス。オープンカーの「SL」ではなく屋根がついている「SLC」を敢えて選ぶか?というところがヘンタイ選択肢である。しかし、今こうして見るとクーペがかえってお洒落だと思えなくもない。
オートマ車黎明期なので4500㏄の排気量を持てあますミッションは実に3速AT。デカくて遅くて燃費が悪い。
更にボンネットが卓球台みたいに長い為に前が見づらく、自宅近くの見通しの悪い丁字路に鼻先を出すのが怖いので遠回りして帰ったりと、運転する分には良いところが殆ど無かった。メンテもそれなりにお金がかかったけれど、なんだか雰囲気が好きで大事に乗っていた。「ヘンタイ車」の中では人ウケもよく(そういう点ではヘンタイとは言えないかもしれない)、今振り返るととてもいい車だったと思う。
ヘンタイ愛車遍歴、つづく。