蒐集茶陶。~ 備前焼 火襷茶碗 人間国宝・伊勢崎淳
どっしりとした貫禄の趣がある印象の強い「備前焼」の中で、軽やかな表情を持つ「火襷」(ひだすき)は、春夏の一服には最良だと思う。
薄茶色の肌に、濃い赤茶色の模様。元々この模様は、焼成時に器同士がくっつかぬよう、麦藁を巻いて防いでいたものが、麦藁の成分が土の鉄分と科学反応することにより偶然出来たものだった。この美しい模様を意図的に発色させた「火襷」は、かつてより備前焼を代表する一技法となっている。
良い焼き物の多くには「陶印」と呼ばれる、いわば作者のサインが記されていることが多い。特に備前焼の作品は、この「陶印」を見るのも一つの楽しみといえる。人間国宝・伊勢崎淳先生の陶印の1つがこの「V」のような印。
ある備前出身の若手作家さんが、「気さくで、本当に皆に尊敬されつつ親しまれている方なんですよ、伊勢崎先生は。」というのを聞いて、益々器への愛着が沸くようになった。