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2018.07.28

連載「クリアアサヒが家で冷えてる」①「海南鶏飯のアレ」こと「姜葱醤」と地鶏の塩焼き鳥風グリル。

 

アジアが誇る至高のご飯ものの一つ『海南鶏飯(ハイナンジーファン)』。鶏のダシが効いたライスと、その上に乗った蒸し鶏。『シンガポールライス』と呼ばれたり、タイでは少しスパイシーにアレンジされて『カオマンガイ』。ベトナムでは「コムガー」などなど、実に様々な名前で呼ばれ、愛されている料理である。

その海南鶏飯にしばしば添えられている、生姜が香る『あのタレ』をご存知のだろうか?

我々は、茫漠とした日々の中で旨いものの仔細な記憶をいつのまにか忘れてしまうことが多い。 「あそこの店の海南鶏飯は美味かった」は覚えていても、「海南鶏飯に付けるタレが美味かった」というところをつい忘れてしまう。思い起こせば、何度かアジア旅の道中でこの『タレ』には出会ったことはある。確か最後は2017年。台北の食堂で、海南鶏飯をアテにビールを呑み、例のタレをねぶりつつ、 『これは、日本の焼鳥(塩)や、揚げ鶏につけて食べたら美味いかもな。今度作って見るか。』そう言ったことをふと思い出したのは、そのおおよそ1年後。

ふと立ち寄った中華街の食材屋で私は『姜葱醤(ツォンジャンジャン)』と書かれた、謎の瓶を見つける。 「・・・これは、もしかして。」事務所に戻って蓋を開け、少しだけ掬って、舌に載せてみる。『間違いない。こ、これは、例のタレだ。』

レジ閉め直前のスーパーに駆け込み、青森産222グラムのモモ肉だけを抱きしめるように手にして帰宅。急を要さないメールの返信や野菜の水切りなど、あらゆることを後回しにして焼鳥の要領でジックリ、ジックリとグリルし、ほんの少量の塩を振る。

「蒸す」海南鶏飯ではなく敢えて「グリル」にしたには理由がある。もし、これに合えば、当然「焼き鳥」の類にこの「姜葱醤」という調味料が合うことを証明することになるからだ。そうなると更には、「黄金色のほろ苦いあの爽快なアルコール飲料」に合うということは火を見るより明らかである。

深夜の晩酌。おっと、「ライス」はタブーだ。特に鶏出汁の効いた、あの香り立つ海南鶏飯のライスなどあろうものなら自制心という城壁は瞬く間に食欲軍に乗り越えられてしまう。ダメだダメだ。想像をしてはいけない。そんな心の格闘をしながらも、両面に良い焦げ目がついた地鶏が香ばしい香りを漂わせ始めた。

『待てよ…ライスが無いシンガポール・ライスは、「シンガポール」か』。そんな 不毛な心の独り言をよそに完成である。 カリッとした表面の、程よく脂の落ちたジューシーな鶏を、『例のタレ』につけ、一口。 ………旨い……塩加減を極限まで抑えた塩焼き鳥に、生姜の香りとねぎ油のまったり感、そして中華だしの風味が抜群の相性だ。満を辞して、本日1本目のクリアアサヒを一口・・・・二口。 合う。合わない理由が地球上どこを探しても見つからないだろう。口の中に残る油分をすっきりとした味わいが爽快に喉の奥に流し込んでくれる。 これぞ、ビールに抜群に合う、アジアの鶏料理と日本の鶏料理の良いところを発揮した、「新・ハイブリット・オツマミ」である。

平皿/伊賀焼

菊花小皿/萩焼

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