2018.05.15
晩酌と器の備忘録。2018.4 ①全日本うなぎの肝連絡会〜世界一ビールに合う鯵まで。
危ない兆しである。今年に入ったあたりから、「料理」と「酒」と「器」に異常に凝り始めている。何が危ないかというと、一つは仕事付き合いや外食による人付き合いをおそろかにしかねない。「外食を減らせているということは節約にもなるし良いか」。とはじめの頃は思っていたのだけれど、これが「酒無しの外食」と比較すると、実は一人の自炊はちっとも経済的ではない。デフレ以降の外食は、本当に安く、美味くなったものだ。それに自炊は、買い出しから調理に至るまで凝り始めると、スーパーマーケットを3件車で回ったり、タレを作る段階で2時間もかけてしまったり、明らかに「無駄」と言える時間が増え、結局、夜に家でやろうと思っていた仕事を「ま。明日やればいいかあ。」なんてこともある。したがって自炊に凝るということは、忙しい人には決して合理的なものとは言い難い。
しかし、自分の好きなアテを(腕さえ上がれば)自由自在に作れるということは勿論、「酒」と「器」と「料理」を合わせて色々と研究してみると、これが何というか、今まで知らなかった世界に飛び込んだようで実に楽しい。日々買い物の段階から「ん。そういえばモツ煮に豚肉をぶち込んだら美味くなるんじゃないか?皿は、アレがいいか。」などと、あまり人生の役に立ちそうにないことと自覚しながらも、やはり美味いもの食いたさあっての「食の好奇心」が働いてしまうものだから、忙しい時と、疲れた時以外は、辞める理由がみつからない。
そんな晩酌を写真に収める中、せっかくその時発見した「料理と酒の相性」や、感動した内容を、酒も手伝ってしばしば右から左に忘れがちである。そこで最近は、呑みながら少し長めのメモとして備忘録をつけたり、酔っ払ってなんとなくfacebookに書いたりしていたのだけれど、これが「ああ。そういえばこんなもの作ったな。」と思い返しつつ退屈な電車の1駅で読み返す位には丁度いいボリュームである。ということで今回は自分為の「備忘録の備忘録」としては勿論のこと、このblogで美味しいものや器が好きな方に是非暇つぶしに読んで頂けたらと思い、しがない40過ぎのおっさんの、4日分の愉しい自己満足な晩酌をUPすることにする。
・・・初回の今回は、以前facebookに上げた内容から。
4月x日
全う連(全日本うなぎの肝連絡会)の皆様、こんばんは。理事の石川です。珍しく生のうなぎの肝が沢山手に入りましたので、今日は、
・茹でうな肝刺し
・うな肝のアヒージョ風
・うな肝のバター醤油ソテー
の研究報告です。
なお、肝刺しとアヒージョ風のみ『にが玉』を取り除き調理しています。
肝だけに、ほんの少し見た目キモいですが(←某料理誌編集長の影響を受けている)、
・まず刺身。わさびより生姜醤油が日本酒(華やか系より本醸造のような酒)と、私の『テーブル芋焼酎』に絶品です。
・アヒージョは世紀の大失敗です。にが玉を除去したのに苦味が立ちます。見るのも嫌なので油を切ってわさび醤油で頂いてます、ただ可能性は秘めてます。何か一工夫必要でしょう。2種の白ワインにも残念ながらあいませんでした。
・バター醤油ソテーは正解でした。にが玉はあっても取ってもアリでしょう。日本酒の色々なレンジに合いそうです。しかし、少し期待していたワインには微妙、うなぎの肝自体、ワインにはなかなか合わないのかも知れないです。
あと、うな肝は、量を食べると苦味で口の奥側の方が麻痺します。休み休み味わうといいです。
以上、本日の報告でした。
4月x日
「やっぱり器って大事だよな。」シリーズ。
4月x日
『海南鶏飯(ハイナンジーファン)』
『シンガポールライス』
『カオマンガイ』。
様々な名前で呼ばれる『アジアが誇る最強飯』の一つ。それに添えられている、生姜が香る『例のタレ』をご存知のだろうか。
『美味いなあ…何だろ、これ。』
日常という名の通勤列車に傘を置き忘れるが如く、我々は、茫漠とした日々にしばしば旨いものの記憶を置き忘れ生きている。
アジア旅の道中、色々な国で、幾度となく『例のタレ』に出会った。確か、最後は2017年。台北の食堂でさんざビールを呑み、例のタレを箸で掬いねぶりつつ、ふと思った。
『このタレは、日本の焼鳥(塩)や、揚げ鶏につけて食べたら美味いに違いない。』と。
1年越しの想い(忘れてたくせに)が、今宵、予期せず叶う。
中華街で偶然手にした『姜葱醤(ツォンジャンジャン)』と書かれた怪しい瓶。
駅まで歩く道すがら我慢できずに蓋を開け、小指で掬って舌に載せてみる。『間違いない。例のタレだ…』
顰蹙覚悟で既にレジ閉め中のスーパーに駆け込み青森産222グラムのモモ肉を抱きしめるように手にする。間に合った…
緊急を要さないメールの返信、野菜の水切り、あらゆることを後回しにして、焼鳥の要領でジックリ、ジックリと、塩をほぼ振らずにグリルする。
残念ながら、深夜の晩酌に「ライス」はタブーだ。特に鶏出汁の効いた、あの香り立つ海南鶏飯のライスなど、あろうものなら自制心など木っ端微塵に崩壊してしまう。
『待てよ…ライスが無いシンガポール・ライスの具は、「シンガポール」か』。
全く持って不毛な心の独り言を戒めつつ、カリッとした表面の、程よく脂の落ちたジューシーな鶏を『例のタレ』につけ、一口。
………旨い……そしてビールに合う。芋焼酎に合う。白ワインに合う。日本酒に合う。
日本を含めた、『アジアのメシ』、そして『アジアのタレ』と、酒の可能性は無限大である。
俺、文章長いよな……ブログに書け、ブログに。
↓
ということでブログにこうして書いているのだ。
4月x日
旅帰り昨日の晩酌。
❶『世界一ビールに合うアジ』と私が認めた熱海の駅ビルで売っている『小田原吉匠』アジ唐揚げ。チーズ味、ペペロンチーノ味、わさび醤油味などバリエーション豊富。帰宅して軽く炙る派だが、頭から全て食べられるのでスナックのように帰りの列車でビールのつまみとしても◎。
❷先般紹介した海南鶏飯のタレ・姜葱醤をアレンジしたドレッシングでサラダ。汎用性高し。
❸阪本健さんの窯に置いてあった売り物ではない試作を無理言って譲ってもらう。沓形茶碗を更に歪にしたような造形。良い風情。『もう作らない』らしいので、世界で唯一の器でもある。初鰹の刺身を、半分炙って盛る。想像通り。高級割烹に負けない佇まいと映え方。素晴らしい。
❹前出の阪本さんが関西の料理屋に合わせて作陶した長皿と同じもの。大阪からの帰路で仕入た・静岡の桜えび・後日詳しく話す予定の、北海道のニシン塩辛・普通に売っているけれどやはり美味い富山蛍烏賊沖漬け・敢えて賞味期限が切れるまで冷蔵庫で保存したペイザンブレトンのカマンベール、というマニアック珍味4種に、彦根のさざなみ酒店で買った滋賀の珍しい無濾過生原酒と、常温保存(放置)の通り一遍な本醸造をぐい呑2種で。
今日思い出しても、じーんと来る200点の晩酌。