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2016.08.10

海鮮礼賛。15の魚食archive。/後編。11〜15

海鮮礼賛。15の魚食archive。/中編。6〜10 からの続き

 

 

 

げんげ から揚げ

★富山 富山市

も う20年近く前になる。友人らと初めて訪れた冬の富山。凍てつく風の富山駅から徒歩数分のこじんまりした和食屋の品書きに、聞いたことも無い、いかにも郷土色を感じさせる名前があった。「げんげの唐揚げ」。海の幸とも山の幸とも分からないその一品がどんなものなのかと店主に訊ねると、言葉を濁す様に(実際は説明に困っただけなのだけれど)「・・・まあ、深海魚みたいな魚ですね・・・。」と。深海魚。頼むべきか、辞めておくか...期待せず興味本位で頼んでみると、出て来たのは衣に包まれたアナゴのように肉厚な白身。アツアツをさくっと齧る。何とも言えぬ旨味がじわじわっと口の中に広がる。それ以降、地方の酒場で聞いたことの無い料理を見たら、高かろうが安かろうが、謎だろうが不気味だろうが必ず注文するという我々の旅の不文律が生まれた。既に20年食べていないが、「富山」という名前を聞くと、あの寒い夜とジュワッとしみ出す旨味を思い出すのである。

 

シャコ 刺身

★兵庫 姫路

シャコと言えば誰もが知る寿司ネタの定番。しかしシャコを生で食べるなどという発想自体そもそもつい去年迄は自分にも無かった。あまり知られてはいないが、実は兵庫・岡山・広島など、瀬戸内の一部では刺身でシャコを食べられる店が点在している。聞くところによると、シャコは死ぬと自らが持つ酵素でトロトロと身が溶けてしまうらしいのだ。よって、比較的身の大きな活シャコを、一度凍らせてから裁くという独特の調理方法によって、しっかりと身の形を保った生のシャコ食すことが出来るのだ。ボタンエビのような甘みがありつつ、けれどエビとは明らかに違う「確かにこれはシャコの味だ。」と分かる風味。活サバや活イカ同様、シャコ刺も近い将来、東京の色々な店に上陸する日が来るのかもしれない。

 

金フグ 刺身

宮崎 高鍋

10年程前、飲食店を経営していた知人が湘南に新店舗を出すというので、仕事をサボって九州の食材視察の旅に同行した。宮崎屈指の地鶏農家を見学し、普段見学の難しい有名な焼酎蔵を回り、九州の食の文化を知る感動に次ぐ感動の旅。夜、地元の皆さんとご一緒した小さな街の和食屋で初めて出会ったのが「金ふぐ」だった。フグでありながら無毒。しかも美味くて安いと聞いて、それではもう一皿と遠慮もせず頂いた。去年宮崎を訪れた際、何件か入った居酒屋で「金ふぐ」を見つけ久々に頂いたのだが、最近は以前の「安い魚」というイメージは幾分薄れ「地元の産品」としての地位を徐々に確立しつつあるように感じた。「お手軽なフグ」とも言い切れなくなることは残念ではあるけれど、宮崎ご当地名物が増えるとすれば、涙を飲んで応援しようと思う。

 

〜海鮮礼賛。海外編〜

 

ムラサキウニ 生

★中国 大連 店名割愛

「日本の海産物が一番美味い」という我々の持つイメージは、果たして幻想なのか真実なのか。世界の海はこれだけ広いのだから、他の場所にも必ず美味いものがある筈だと世界地図を見て思うのがどちらかと言えば自然である。反面、活締め、血抜き、冷凍方法...といった水揚げ時の処理方法から始まって、料理人の仕込み、旬のタイミングを見る目などなど…の結果、「やはり日本の魚は美味い」と感じる理由も、これは疑う余地がない。数年前、初めて日本で食べた海鮮より美味いものを海外で食べて愕然とした。場所も、中華料理以外のグルメをノーマークだった中国・大連である。大連はもとより、中国・韓国各地には、実は巨大ないけすを完備した海鮮料理屋が無数に存在する。かといって刺身で食べてそれらが美味いかといえば、必ずしもそうでない。しかしこの店で食べたウニは、新鮮、剥きたてというのもあって、今日においてもかつて食べたウニの中で間違いなく一番の味だ。もしかしたら日本にもそれ以上のウニがあるのかもしれない。礼文島や稚内でラッコ宜しくウニをかち割って食べたらきっと美味いのだろうなと思う。いずれ日本のどこかで、大連のウニと火花を散らす美味いウニを、日本でも食べてみたいものである。

 

 

カザミ(ワタリガニ)カンジャンケジャン

★韓国 ソウル・プサン等

日本でもワタリガニは沢山捕れるというのに、こんなに美味いカニの食べ方があるのに、何故に日本で浸透していないのか?こればかりは本当に不思議で仕方ない。今度、釣りに行って活きたワタリガニを運良く捕まえたら、即刻韓国の知人に連絡してカンジャンケジャンを浸ける為のレシピを教えてもらうつもりだ。ワタリガニは身が小さい。だから日本ではみそ汁に使う位しか殆ど用途が無く、漁も盛んではない。いつもソウルではケジャンの身をしゃぶりながら、「このタレの並々入った一斗缶に大ぶりのズワイやタラバをブチ込めたらなあ。」などと妄想を膨らませる。というわけで、来月もカンジャンケジャンを食べる目的でLCCで渡韓予定だ。ソウルでも、釜山でも、済州島でも、カルビやチゲやサムギョプサルの美味い店に行くのは勿論楽しみだけれど、ともかくカンジャンケジャンが美味い店を探すことに関しては一切の妥協はしない。

 

今年は、幾つの素晴らしい海鮮に出会えるか。

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