2016.05.20
旅する理由。僕のHP源流の音。COOL ASIA. [The Shanhai Restration Project]
「何でアジアばかり旅してるんですか。」という、特に深い答えを求められない問いに対して、
「好きだからかな。」
と答えている。「何故?」に対してのその理由を1から10まで語ってしまうと、聞く方がきっと参ってしまう。だから、僕が酔っぱらっている時にこの質問をしない方がいい。収拾がつかない。
もう少し突っ込んだ話しを聞こうとしてくれる人に「何故?」と聞かれたときには、その1~10のうち「1つは・・・」として答えることが多い。そして「その1つ」は時と場合によって違うのだけれど、中でも話す割合が多いのは「アジアは、我々アジア人が思っているよりCOOLでカッコいい。それを日本、アジアの人に気づいてほしいから。」とやや長い話しを始めるケースが多い。
そう。日本人の「良くない所」をこちらも「1つ」挙げるとするなら、西洋に目が向きすぎていてアジアの魅力やカッコ良さに殆ど気付かないということだと思う。すでに「欧米がカッコいい」「優れている」というもはや不文律のようなものがここまで形成されている以上、「気づけ」と言う方が無理な話かもしれない。見渡すとファッション・音楽・芸術・文化・・・カッコイイの指標の中には殆どアジアの入る余地が無い。これは、実は日本に限ったことではない。アジアは、全土的に致命的な「欧米コンプレックス」に包まれているのだ。
そんな世の中で、僕のような小市民が声高に「アジアもカッコいいんだぜ。」と叫んだところで世界は1ナノミリメートルも同調しないけれど、「ブラジルの蝶羽ばたきがテキサスで竜巻を起こす」という話で有名な「バタフライ効果」を心のどこかで淡く期待している節が、自分の中にある。僕の場合、目標に向かって原野を切り開き直線的に突き進むというのは性に合わない。じっくり地図を見ながら、時に川のほとりで釣りをしたり、おいしそうな木の実を食べたり、少し遠回りして足場の良い綺麗な道を休むことなく歩みながら、気づけば目的地に着いたというのが断然性に合っているし結構そうやって大体のことは奇跡的なくらい上手くいってきた。アジアを今よりもっと、自信と楽しみと美しいモノ、人、心に満ちた世界になってほしいという、目的に根差した蝶の羽ばたきのようなアクションをもう一つ積み重ねに、来週もエアバスA320の翼でフィリピンに飛び立つところだ。
そんな想いが詰まっているこのホームページ制作にあたっては、実は完成まで1年以上の歳月を要した。関係者の皆様には多大な労力と時間をかけさせたことを今も深く感謝し恐縮している。何故なら時間がかる理由は、一番最初の僕の無理難題から始まっていたからだ。
「どんなページにしたいか?」という初めの頃の打ち合わせの際に、僕が用意したのはある現代アーティストの2つの「楽曲」と、アジアにルーツを持つファッションブランド店舗で撮ってきた写真の数枚。
「これが、俺のイメージです。」
理想に近いどこかのホームページ例や、配置、色、構成などを提示するほど、僕は自分のホームページに対する確たる理想のモデルを、僕はまるっきり見いだせなかった。取り掛かる前は、出先のユニクロで着替えのTシャツを選ぶようなものと思っていたけれど、これが「さあ、作りましょう。」という段になると、まるでいきなりテーブルの上に大きな粘土の塊を置かれ「これで喜怒哀楽を作ってください。」と言われているような絶望的なノーアイデア感に陥ったのだ。
数日悩んだ挙句、とにかくカタチや見た目は二の次で、そのホームページが醸す「雰囲気・世界観」が好きなら、少なくとも自分はどんなものでも満足できるだろうという結論に至る。では、それを明確に人に伝えるにはどうすればいいか。言葉や誰かのWebページではダメだった。いきなりメールで音源と写真を送り付けられたWebディレクターのTさんもさぞかしあの時は困ったのではないかと思う。
そんなわけで、今日は僕のホームページの2つのイメージ題材(「曲」と「写真」)となったうちの「曲」を紹介しようと思う。
アメリカ・NYを拠点に活動している、アジアにルーツを持つアーティスト
[The Shanhai Restration Project]の楽曲。
<prefece>
この曲を初めて聴いたのは、友達のレイチェルチャンがナビゲーターを務めているJ-WAVEの午後の番組だった。僕は車を止めて生放送中にも関わらず彼女に「今掛かってるの、何ていう曲?」とメールを打った。間髪入れずに返信が来た。「以前ゲストに来たアーティスト。知り合いだよ。」と。(生放送中だというのに)というのをよく覚えている。6年位前の話だ。
穏やかで、品の有る音と旋律。誰が聞いても「アジアン・テイストな曲」かと言えば全くそうではない。けれど、僕は上海の古い紡績工場をリノベートして出来たアートスペースの石畳を歩く時に、静謐なカンボジア遺跡の回廊で破壊されたクメール石像をを眺める時に、アユタヤの遺跡とガジュマルの樹の向こうに落ちる真っ赤な夕日を眺めている時に、この曲は、延々と僕の頭の中に再生されるのだ。ひとえに「アジア」という言葉にまとめられるよりは「仏教美術」というイメージになんとなくリンクしているのかもしれない。アジアの美しい風景に「添える」音として、僕はこれ以上に美しい楽曲を知らない。
The Shanhai Restration Projectの楽曲の中には、いくつか、特に中華圏を旅する時に必ずといってよいほど心の中で奏でる曲がある。
積まれたせいろと朝粥の湯気がたちのぼる上海の狭い胡同の路地を散歩しながら。
早朝まだ人の少ない薄曇りの台北の繁華街を自転車で走りながら。
天津の古き良き時代の香りがするヘリテージホテルからイギリス租界の街並を見下ろす窓辺に流れる曲は、例えばこれだ。
<Miss Shanghai> The Shanhai Restration Project
これからの僕の旅のあらゆるシーンで、これらの曲は奏でられることだろう。本当に何度聞いても、The Shanhai Restration Projectは「クールで美しいアジア」の世界観を見事に表現した楽曲を生む、希有なアーティストだと思いますが、皆さんにとってはいかがでしょう。
また今度、次は僕のホームページ2つのイメージ題材(「曲」と「写真」)のうちの「写真」を紹介しようと思う。