Asia モノクロームの空に。❸ Cambodia
Angkol Wat カンボジア旅の最大の「後悔」。それは、かの世界遺産アンコールワットに「裏口」から入ってしまったということだ。あまりの迫力にそうとは気づかず、上に昇り、遺跡全体を見下ろした時の「しまった」感。良い映画を途中から見てしまったような気分。私のように自由気ままな自転車遺跡巡りの人は、特に注意されたし。
縮れた雲に覆われた空の下、おおよそ千年もの間、静かにこの場所に聳えるアンコールワット。頭を落とされ、腕を捥がれた幾体もの仏像が立ち並ぶ回廊。無残に砕かれ、地面にうち捨てられた柱。やがて人々から忘れ去られ、森と同化した数百年の時を越え、この塔は流れゆく雲を悠然と眺めていたのだろう。
Ta Prohm 樹木とアンコール王朝の遺構が共に溶け合うように佇むタ・プローム。遺跡保護の観点で「ガジュマルの樹が遺跡を浸食しているのか?」或は「遺跡を支えているのか?」ユネスコを含めた有識者たちが議論を続けているそうだ。石は穏やかに腰を据え、植物は静かに天に手を伸ばそうとする。果たして人間が本当の答えを知る日は来るのだろうか。