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2018.02.17

心踊らせる「10の美食」覚書。2017年版.

 

東京 wagasiasobi「ドライフルーツ羊羹」

「酒呑み」と「甘党」は相反するものというイメージはある。けれど、実は甘いものも酒も好きというオトナは結構多い。かく言う自分もそのクチだ。けれど食事をしながらましてや酒を飲みながら甘いものを、積極的に食べるかといえばそれはNOだ。どんなに旨かろうが寿司ネタに「玉子」はそんなに要らないと心の中で思っている。酢豚にパイナップルは論外。ところが、とあるイベントで、茶人のMさんが提供していたこのドライフルーツ羊羹を口に運んだ瞬間、抹茶の後に無性にワインが飲みたくなった。口に広がるなんとも言えぬ華やかな芳香。品の良い餡の甘さ。世の中にこういうマッチングがあるものなのか!と、翌週には羊羹を買いに乗り慣れない池上線の路線図を見ながらこの和菓子を作る、wagasiasobiという店に向かった。ワインはもちろん、コーヒーにも抜群に合う。「和菓子」という概念を2段位飛び超えた、稀有な和スイーツ。

 

 

北海道 網走「たこまんま」

このご時世、美味いもの美味い店の情報はネットで大体得られるものだと多くの人は信じて疑わない。しかし、今年「やはり地方グルメは奥深い」と唸らされたのは、美食の宝庫・北海道。監獄の存在で「地の果て」のようなイメージのあった網走である。「たこまんま」という、音の響きでは正直あまりそそられない名前・・・想像するに、タコのぶつ切りが入ったおこわか炊き込みご飯でも出て来るのだろうと考える。網走で人気の回転寿司屋。またま横に座った初老の紳士が美味そうに食べていた「謎の軍艦巻」が、まさかの「たこまんま」だったとは。薄茶色をしたのゼリーのような半透明の異物が光沢を持ち湛えられている。若干気味の悪いその謎の軍艦巻きを、恐る恐る注文し、醤油はかけずに食えという板長の言うがまま口に運ぶ。・・・何だ!この食感は!何なんだ!あたかも外野手の遥か上空を放物線を描いて飛び込むホームランのように、想像を大幅に超えて来る旨味は!負け投手のような気分だった。結局、この旅の最中、2件の寿司屋で計10巻ほど食べた。東京で出会えぬこのような超美食に出会うだけで飛行機代の元を取ったような気分になるのは、私だけだろうか。

 

 

愛媛 松山「活ゴマサバ」

おそらく高級ブランドサバでお馴染み、「関サバ」と似通った生息域の「ゴマサバ」ではないかと推測する。この松山の九州側の対岸・大分で揚がる「関サバ」は「マサバ」という魚種である。価格はいわゆるプレミアムブランドであるその関サバと比べると、「ゴマサバ」は圧倒的に安い。しかし、一級品の「関サバ」に殆ど引けを取らない味。秋から冬のサバはマサバもゴマサバも、本当にうまい。愛媛以外でも旨いサバは確かに食べられるが、そんな大分の対岸、愛媛のゴマサバを応援する意味も含めて、今回この10品にノミネートすることにした。ちなみに、九州には「ごまさば」という、同名の胡麻を使った美味い「鯖のヅケ」料理がある。だから「マサバのごまさば」があったり「ゴマサバのごまさば」があったり、実にややこしい!とか文句を言いつつ、それも美味いから大分か福岡で是非食していただきたい。

 

 

前出「たこまんま」ほどの強烈な意外性はなかったものの、東京ではなかなか手に入らない2017年にすんなり出会えた絶品のアテである。「このわた」や、「塩辛」、「酒盗」などが好みの方は、北海道に行った際にこの味を確かめない手はない。「めふん」とは、鮭の腎臓の塩辛とのこと。どろりとした赤黒いその謎の食べ物は、最初抵抗があるかも知れない。美味いものを知るには冒険心が必要である。恐る恐るその物体を舌に乗せた瞬間、何故今までこれを知らなかったのだろう!と後悔する筈だ。今、居酒屋でもスーパーの店頭でもしばしば見かける「たこわさび」というアテは、実は20年ほど前には殆ど手に入らないツマミだったので、静岡や三崎に用事で出向いた際には手に入れて喜んでいたものだ。「このわた」や「カラスミ」も、昔よりは随分と手に入りやすくなった。なまこの内臓が原料である「このわた」に比べると、鮭という食材は量的に圧倒的に多い。なので、この「めふん」も、いずれその辺りの横丁で普通に食べられるようになる可能性を十分に秘めている。その日が待ち遠しい。

 

 

韓国 釜山「謎の刺身・ユ○○」

コリコリした歯ごたえと赤貝のような絶妙な風味。釜山の刺身居酒屋でこれを食べた時、まさか正体が、中国沿岸部の町の生簀に見かける「アレ」だなんて想像もしなかった・・・。韓国の酒場は、焼酎(ソジュ)、ビール、マッコリといった酒以外は、ほぼ扱っていない。しかし、これは日本人として主張したい。「ワサビ醬油と日本酒のマッチングが至高の珍味」だと。ただし、80パーセントくらいの人がこの食べ物の正体を知って「オエ!!!」と一瞬後悔するに違いない。その正体とは・・・やめておこう。「ユ○○」としておく。どうしても「気になる!知りたい!食べたい!」という方は色々検索していただければ、そのうち答えは出てくるだろう。ただし、自分もアジア旅慣れしてない頃にもしこれをこれと知らずに誰かに食べさせられたなら、ちょっとキレていたと思う。それくらい「ヤバい」ビジュアルだ。美味いものに目がくらむと、色々な感覚が麻痺してしまう。今目の前のテーブルに出されたら間違いなく狂喜して食べる。果たして2018年はどんな「ヤバい」グルメに遭遇できるか。おっかなビックリである。

 

 

東京 北千住「焼きサバ/サバ燻製」

八戸の友人の酒蔵の会を年に一度は都内で主催している。毎回開催場所を変えながら、去年で8回を迎えた。蔵の演技的に8回目が「アニバーサリー」となるので、提供するものにはいつも以上にこだわる。八戸という漁師町の酒に合う絶品はないものか?と、蔵の専務にアイデアを求めたところ、「八戸出身の大将が経営する美味い居酒屋がある」という。早速オフィスワーカー時代のグルメな旧友を呼び出し、いざ北千住に下見(いや、味見)に。立ち呑みスペースからすでに満席である。諦め帰ろうとしたところ、そこには下町人情が。外テーブルの紳士淑女グループが「兄ちゃんたちさ、ここんとこのテーブル空けるから使いなよ!」こういう「粋」が、下町酒場の醍醐味である。熱々のサバを頬張る。美味い!しかも安い!秒速で酒の会のアテ即決である。冷えていても十分美味しいつまみになると思っていたのだが、なんと酒の甲斐当日この店の大将が来場してくださり、自らが焼いて振舞ってくれたおかげで、70名のグルメ達がもれなく大絶賛。北千住「ごっつり」。他、ホルモンの串物なども大変美味いけれど、「焼きサバ」と「サバ燻製」これは・・・外せない。更に言うなら、脂の乗った秋から寒い時期に訪れていただきたい。2017年下町グルメナンバーワン「。

 

 

台湾 台北 〇〇〇〇「四川〇味鶏」

「知っている」と思い込むことは、本当に危険なことである。人間は、自宅或いは職場の近所に思わぬ美味い店があることを結構知らない。年に2回は台湾の色々な街を訪れ、この島各地の人気店や夜市で美味いものを食い漁ってきた。「まあ、台湾の美味しいものは大体食べたかな?」なんていう傲りが少しあった2017年。しかし、やはり探せば実は旨いものはいくらでもあるものだと気づかされた。台南?高雄?花蓮?いや、台中?嘉義?答えはNO、我々が、一番台湾で馴染みのある「台北」の街中である。「四川〇味鶏」と〇を伏せさせて頂くが、まず四川省にある「〇味」というタレと、このテイストは恐らく異なる。茹でたチキンの上に怪しい緑色のソースがどっぷりと掛かっている。これが、たまらない。初めての味だ。恐らくネギを使っている。そしてほどよくニンニクや生姜が効き、ビールに合う。これは白飯にも抜群に合うに違いない。本場の中華があまり好きでない日本人も結構いるが、この味が苦手な人はそういないだろう。どんな味か?それを上手く説明できない・・・。是非、空路ひとっ飛び。お試しあれ。お店の名前は今回は〇〇〇〇と伏せておくけれど、すぐ見つかるでしょう。

 

ミャンマー ヤンゴン「ダンパウ」

「ダンパウ」という料理を知っている人は日本人に100人に1人もいないだろう。それでは「ビリヤニ」はどうだろう?食べた人もかなり多いだろうし、少なくとも聞いたことはある人が殆どだろう。実は「ダンパウ」とは、ミャンマーのビリヤニである。正直、私はインドに1回しか行ったことがないし、日本含め各国でビリヤニを食べた回数といえば、10回あるか無いかというところだ。人生で10杯ラーメンを食べたところで「これが私が知っている、世界で一番美味いラーメンでだ」と言だったところでラーメン好きには鼻で笑われてしまうことだろう。インド人にはもしかしたら笑われてしまうかも知れない。けれど、今の私の人生の中でダントツ一番美味しかったビリヤニ改め「ダンパウ」は、ヤンゴンの街には珍しい「行列」を作っていたこの店のものだ。オイリーでスパイシー。かつ、しっかりと訴えて来る、独特の旨味がある。いつか機会があれば(なさそうだけど)インド人の感想を聞いてみたい。店名を記したいところだが何せ文字が読めない。けれど実はJ-WAVEの旅好きリスナーが私のツイッターを頼りに店を見つけて「来たよ!旨いね!と報告をくれるのだから旅好きには本当に恐れ入ってしまう。こちらも是非皆さんに探して味わって頂きたい。ヒントはSINCE1947.

 

 

インドネシア バリ「LITTLE BIRDのナシゴレン」

そう来るとご飯ものをもう一つ。ビリヤニ以上に日本にその存在が定着しているのが「ナシゴレン」。いわばインドネシアのチャーハンだ。バリ最大の繁華街である「クタ」が西岸とすると、東岸にあるのが、長閑なローカルビーチタウン・サヌール。この町に「リトルブルーバード」というユルい空気が流れるサーファーズ・カフェがある。写真の画質がすこぶる悪いが、薄暗くムーディーな店内で撮影したものなのでお許しいただきたい。一見、適当なナチョスやタコスを出しそうな雰囲気のこの店。ものすごく美味しいものを期待して入るような印象は、正直無い店だ。しかし、この店の料理が、盛りも豪快且つ、味がすこぶる良い。店名の「小鳥」とは縁遠い、屈強なサーファー兄貴がタトゥーの入った上腕筋でフライパンを振り、まるで胸板の厚さを誇示するために作られたようなTシャツの兄貴が、音楽に体を揺らしながら料理を運ぶ。エアコンも無い星降る熱帯夜に、安いビールをガブ飲みしながらかっ食らうナシゴレンは、素直に「美味っっ!」と声を発してしまうクオリティである。体に良い(と世間で言われている)ものを食べて「体が喜ぶ」なんて言い方をするけれど、そういうタイプでは無い。けれど本当に「体が喜ぶ」メシ。グッとテンションが上がる味だ。南国のメシ、かくあるべし!

 

 

中国 上海 佳家湯包 純蟹粉湯包

ラジオ番組で「死ぬ前に食べたいもの」として某美食家が名を挙げていたのが、この店の蟹肉小籠包だった。以前から噂には聞いてはいたが、本当にそこまで美味いのだろうかという懐疑心を胸に抱きつつ、久々の上海便に心踊る。早朝、浦東空港からほぼ始発のMRTで目をこすりつつ人民広場駅へ向かった。店構えは、「名店」と呼ばれるようなムードの欠片もない。味もそっけもない店頭に不釣り合いな午前中の行列に、その店の本物度が推し量られる。メニューの値段は総じて界隈の軽食屋と同じように安い。ただしそれは「1品を除いて」だ。普通の小籠包の7倍強の値段がつけられているその一品こそ、「純蟹粉湯包」なる小籠包だ。小籠包いえば、台湾の「鼎泰豊」と上海の「南翔饅頭店」の2大巨頭が世界の評価を分かつ。上海の街、その南翔饅頭店からわずかに離れた町の一角にあるこの店だ。眠い目をこすり、一口を実食。蟹と、蟹味噌の旨味が口の中に暴発する。とにかく濃い!!一気に目がさめた。世の中の食べ物「濃い」と「美味い」は得てして等号で結びつかないことが多いが、とにかくこれは「濃くて、美味い」。昼寝をして夕方最も美味いと思っていた南翔饅頭店でも小籠包を食べたがこちらも文句なしに美味い。蟹の濃さでは「圧勝」。果たしてあたは、どちらが好みか。

 

 

東京? dancyu U編集長の秘密の食堂

年末、「dancyuの編集長の忘年会に行くのだけど、一緒にゆく予定だった人が来れなくなったから来る?」という、いわば「補欠要員」としての誘いがあった。結構人見知りな性分と、立食形式で高いメシを食った自慢をし合う人がいたりしてひたすら話を聞いたりするのはうんざりだなあ・・・という勝手な妄想をしながら悩んでいだが、立ち読みも含めた当誌の「愛読者」として、一体どんなものが出るのかものすごく気になったので食欲が先立ちお邪魔することにした。いざ行って見たらそもそも「忘年会」などではなくて、神出鬼没・秘密のレストラン。もう少しちゃんとした格好で行けばよかったかな・・と思いながら見た、コースのメニュー表に驚愕。「フニクリフニクラ」「貴ノ岩」「念仏」「槇原敬之」・・・など、全く料理が想像つかないものばかり。ちなみに写真の一品は「初詣」。次々と繰り出される絶品美食の説明を聞いて「あはははは!なるほど!」と、それぞれのテーブルから笑顔が溢れる。美食とダジャレのマリアージュ。去年最後に、最高のディナー。「いつか自分もこんな美食の会をやりたい」と胸に秘めつつ、2018年を迎えるのであった。

 

 

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